Grand ami , Eugène Delacroix
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サン・シュルピス聖堂に残る絵画 |
「フランスの全ての画家は、彼の偉大なるパレットを通して描いている」 by セザンヌ
「彼」とは、ウジェーヌ・ドラクロワさん。ショパンの親友です。
彼が最期に住んだ家(1857~63年)を訪れました。
ドラクロワの絵画といえば、
ぱっと見て感じていたものが、モネやルノワールの絵のようなほわほわではなく
暗・重・陰・惨・闘・強い憧れ・・、
事実をばんっと突きつけてくるような絵も多いですよね・・。
そして、小説「葬送」で登場するドラクロワさんの語り口調もそのような感じに感じ。。
ドラクロワさんの思考を読んでいると毎回気分が重~~くなっていたので
私たちは家(アトリエ)もさぞかし重い空気なのかなと・・・(ごめんなさい笑)
行くのもちょっと覚悟していました(笑)
しかし、行ってみると、とても爽やか。
とても気持ちがよく、柔らかで細やかな空気が体に染み込むような・・・
優しい優しい空間でした。
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お庭から望むアトリエ |
「私の小さな庭の眺めとのどかなアトリエは、いつも私に喜びをもたらしてくれる。」 (1857年の日記)
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アトリエ向かいの住居(2階) & 家の周辺 サン・ジェルマン・デ・プレ辺りで画家さんたちが多く住んだ地域です。 |
ウィーンのシューベルトの家のように、周りのアパルトマンに囲まれてぽつっと四角い?お庭があって
周辺の少しがやがやとした街並みの中に、すぽっとそこにだけ、静寂ができていました。
木が風にそよいで鳥が遊びに来て・・ずっといたくなるような場所でした。^^ もう一度行きたいです。
ここの木々たちはドラクロワ自身が植栽したそうです。
ルノワールやマネ、フランスの後々の画家たちは、ドラクロワから「感じ取り方」を学び
ピカソやマティスたちも大きな影響を受け、たくさんの「模写」を残したと言われています。
代表作は「民衆を導く自由の女神」。
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La Liberté guidant le peuple @ Musée du Louvre |
ショパンとドラクロワって、白×黒という感じがします。(そういえば、お墓も・・(笑))
2人とも思っていることも、天才ゆえの自分しか感じない感覚という孤独も、そんなに変わらない。
ただ表に・・性格や作品に表れてくるものは、ちょっとだけ形が違います。
でも、ドラクロワに現れていた、上記のような黒い雰囲気はショパンも内にもっていたし
ショパンがもつ柔らかさや品、優しさ、寛容も、同じようにドラクロワも持っていたのだと思います。
だからお互い分かり合えて、なんでも語り合えたのでしょう。
本を読んでいて、ショパンにそういう人がいて良かったと、心から思いました。
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Portrait de Mme Leon Riesener |
美や調和の究極の一瞬・空気を、作品にとどめるもの。
ドラクロワにとっても、ショパンは感覚を分かち合える
大事な人だったでしょう。
小説「葬送」の中で、この2人が語り合うシーンは本当に良くて・・
言葉の端々に、2人の優しさや気品、いたわりが溢れている、
とても好きなシーンたちです。
その口調は、私が日々、個人的にショパンの音楽から感じていた
ショパン像と寸分の違いもなく、そして
その話し言葉や呼吸、登場した時の空気は、
ショパンの音の置き方、音色・テンポにそのまま繋がります。
パリでもノアンでも、たくさんの語らいをもった2人ですが、ドラクロワは、
「ノアンでショパンが演奏してくれたこと、
それはこれまでのどんなおしゃべりよりも素晴らしかった」
といっています。
芸術を感じ合う、
これよりも多くの想いを共有できることはないのではないかと、思ったりします。
ショパンもドラクロワも、それぞれの絵、音の中に、
数々の「信頼のかけら」を見つけていたのでしょう。

「100年後に、皆が私のことをどう思っているか知りたい」と言い残したドラクロワさん。
色はあせるけれど、形が永遠に変わらない、メッセージの伝わってくる絵画たち見て
形がとどまらない音楽を演奏する者として、作品そのものの良さ、メッセージを
そのままの形でちゃんと残してあげたいなと、改めて思いました。
written in Jan 2010